018_UFOイメージ
鎌倉室町時代のUFO


 UFOの定義にはあいまいさがあるが、それでも少なくとも「未確認飛行物体 (Unidentified Flying Object)」の名称どおり隕石、彗星や人工飛翔物、更には自然現象と確認できるものはUFOとは呼ばない。また、例えばもし地球外からの宇宙船と確定できた場合もUFOではなくなる。
 このような基準で鎌倉時代更には室町時代に文献に記録されたUFOにはどのようなものがあったのであろうか。なぜ日本の中世を選ぶかというと、人々は亡霊や霊魂などの存在を迷信として否定していなかった時代であり、その意味ではさまざまなUFO的な現象が数多く観測され文章として遺された時代ではあり、事実、現代人の感覚でいえば超常現象と思われるような記録が多く見受けられる。しかしながら、当時、もしUFOを見たとするとそれをどのように表現し記録するかと考えると、UFOとかそれに類する適当な言葉が無かったがゆえに、十中八九はそれを「光物(ひかりもの)」と表現せざるを得なかったと考えられる。
 従って中世の文献でUFO記述を見つけようとすれば、「光物」をキーワードとして探せば、その中に現在の定義に基づく「UFO」の記録が見つかる可能性が高いと言える。
 実
際にどのような記録があるか紹介する。

 鎌倉時代には、鎌倉幕府編纂の歴史書といわれる「吾妻鏡」には「光物」の記述が9カ所あるが、その内6カ所を以下に列記する。

 ①(1182年 寿永元年 6月20日)「戌の刻、鶴岡の辺
光物有り。前浜の辺を指し飛行す。その光数丈に及び、暫く消えずと。」
 ②(1213年 建歴3年 3月10日)「戌の刻、故右大将家法華堂の後山に
光物有り。長一丈ばかり、遠近を照らし暫く消えずと。 」
 ③(1213年 建歴3年8月18日)「丑の刻に及び、夢の如くして青女一人前庭を奔り融る。頻りにこれを問わしめ給うと雖も、遂に以て名謁らず。而るに漸く門外に至るの程、俄に
光物有り。頗る松明の光の如し。」
 ④(1247年 寛元5年1月30日)「越後入道勝圓の佐介亭の後山に
光物飛行す。」
 ⑤(1247年 宝治元年5月18日)「今夕
光物有り。西方より東天に亘る。その光暫く消えず。」
 ⑥(1256年 建長8年6月14日)「巳の刻
光物見ゆ。長五尺余り、その躰初めは白鷺に似たり。後は赤火の如し。その跡白布を引くが如し。白昼の光物尤も奇特と謂うべし。本文の所見に有りと雖も、本朝に於いてその例無しと。また近国同時に見ると。」

 鎌倉時代には吾妻鏡とは別に著明なUFOの記録が残っている。
 
 ⑦(1271年 文永8年)「江のしまのかたより月のごとく
ひかりたる物、まりのやうにて辰巳のかたより戌亥のかたへひかりわたる。十二日の夜のあけぐれ、人の面もみへざりしが、物のひかり月よのやうにて人々の面もみなみゆ。太刀取目くらみたふれ臥し、兵共おぢ怖れ、けうさめて一町計りはせのき、或は馬よりをりてかしこまり、或は馬の上にてうずくまれるもあり。」(「種々御振舞御書」平成新編日蓮大聖人御書 p1060)
  (注釈)鎌倉竜の口の刑場で9月12日の未明に日蓮大聖人が首を切られようとした時に「月のように明るく光るものが、江ノ島(東南)の方向から北西の方向に飛んできて、人々の顔を照らし斬首刀取りは目がくらんで地に伏せてしまった。」

 室町時代(南北朝時代)としては、「太平記」には光り物の記述が10カ所程あるが、その内2カ所を以下参照する。

 ⑧(1336年 建武3年)「八月二十八日の夜の事なれば道最暗して可行様も無りける処に、俄に春日山の上より金峯山の嶺まで、
光物飛渡る勢ひに見へて、松明の如くなる光終夜天を耀し地を照しける間、行路分明に見へて程なく夜の曙に、大和国賀名生と云所へぞ落著せ給ける。」(第18巻 [先帝潜幸芳野事]章)
  (注釈)「奈良県にある春日山から真南35kmに位置する金峰山に向かって明るく光るものが飛び渡り」後醍醐天皇の吉野遷幸一行の道程を照らした。」
 ⑨(1342年 歴応5年)「吉野の先帝崩御の後、様々の事共申せしが、車輪の如くなる
光物都を差して夜々飛度り、種々の悪相共を現じける間、不思議哉と申に合せて、疾疫家々に満て貴賎苦む事甚し。」 (第23巻 [就直義病悩上皇御願書事]章)
  (注釈)「後醍醐天皇の崩御の後、車輪のような光るものが夜な夜な京都に向かって飛来した。」

 以上のように鎌倉・室町時代の文献から真実度の高いと思われるUFO記述が現存している。UFOが観測されていたということは、まず間違いないとみてよいと思うが、どのようなUFOであったかはこの時代とは別の現代をも含めたUFO記録と比較して推測するしかない。
 いずれにしても、「UFOは存在する」ということについては私は否定しない。

[参照文献]
「吾妻鏡データベース」国文学研究資料館 http://base1.nijl.ac.jp/infolib/meta_pub
「東鏡目録」http://www5a.biglobe.ne.jp/~micro-8/toshio/azuma.html
「平成新編日蓮大聖人御書」(大日蓮出版)
「太平記 全」(国民文庫刊行会)、他文献