#055 十五夜は満月?

055_十五夜yy
十五夜は満月?


 地球は太陽の周りを回り、月は地球の周りを回りながら太陽の周りを回る。
 厳密に考えると、分かっているようで分かっていないこともいろいろある。

 例えば、月は何日で地球を回るのか?
 地球の衛星である月は、27.3217日で地球を公転している。
 では、月の満ち欠けの周期は何日なのか?
 月が地球の周りを回ることによって、太陽からの光が月に当たって明るい面が地球から見える位置によって、新月(全部が陰となる朔日)から徐々に三日月になり、上弦の月(弓張月)、満月(全部が明となる十五夜、望月)になりまた、下弦の月、そして新月に戻る。この満ち欠けの周期は、平均約29.5日。
 月の満ち欠けの周期と月の公転周期は、一致しない! なぜか? それは、月が地球を回る間に、地球が太陽の周りを回って動いているために、新月から新月に戻るためには月も余分に動かないといけないことによる。おおざっぱな言い方をすると、月は約1月かけて地球を1周(公転)するが、地球は約1年(12ヶ月)かけて太陽を1周することより、約1年経った時、月は1周余分に地球の周りを回らないと地球との相対位置で元の位置にもどれないことになる。そのため月の公転周期約27.3217日を12ヶ月でわった約2.28日余分にかけた日数が1ヶ月当り余分に月の満ち欠けのための日数がかかるので、約27.32日+約2.28日=約29.6日がほぼ月の満ち欠けの日数となる次第。

 月の満ち欠けは平均約29.5日と言ったが、実は季節によってまたタイミングによっても、これも約27.8日から約31.2日の間で変化している。従って、満月を十五夜と呼んでいるが、これも満ち欠けの周期の半分の約13.9日から約15.6日と、実際には新月から15日で満月になるわけではない。十五夜は陰暦15日の夕方に出る月のことだが、陰暦15日にぴったりと月齢が15.0とはならないので、陰暦15日とは月齢14.0を含む日と決められている。新月から数えて14日目に満月となる場合もあれば、15日目に満月となる場合もある、ということになる。
 更に、月は地球の周りを円運動しているのではなく、実際には楕円運動をしており、なおかつ複雑なことにこの楕円運動自体も約9年かけて回転している。
 昔むかし、西洋では太陽が地球の周りを回っているという天動説がキリスト教の教義であった。神は単純さを好むということがその根拠であったが、そもそも地上から見た月だけでもこんな複雑な動きをしていたというのが真実であったわけである。

 我々が地球から眺める月は、月の半分しか見えない。裏側は見えないのは当たり前、と思うが、ここで言う半分とは常に同じ面という意味の半分を言っている。月は常に同じ面を地球に向けており、月の裏側はどんなに逆立ちしても地球からは見えない。
 これは、月の公転周期と自転周期が一致しているために起きる。月の公転周期(前述)は27.3217日であり、自転周期も27.3217日であり、公転自転の周期が一致している。
 月は、地球の周りを1回転する間に自らも1回転するため、常に同じ面を地球に向けているわけである。人類は、月の裏側を月を周回する人工衛星を打ち上げて初めて撮影することができた。これによりようやく月球儀が完成できた。
 これも厳密に言うと、月の公転軌道は不安定でもありその速さもわずかにぶれており、また、地球と月の距離は他の天体などと比較すると非常に近いと言えるため、地球上の違う場所から月を見ると少し月の裏側も見えてしまう。このような理由で、月の半面ではなく、実際には月の表面の約6割を地球から見ることができる。

 なお、月は公転自転の周期が一致していると述べたが、これは決して珍しいことではなく、太陽系の衛星にはこのような例が多くある。
 公転周期と自転周期が一致している太陽系の天体は、地球の衛星(すなわち、月)だけではなく木星の衛星は5個、土星の衛星は9個、天王星の衛星は5個、海王星の衛星は1個、冥王星の衛星は1個、というように分かっているだけでも22天体ある。また、未だ自転周期が分からないために一致しているかどうかがわからない衛星や孫衛星の場合もあり、今後更に増える可能性もある。

 人間は昔から月を観測し、暦(太陰暦)を作り、生活基盤を築いてきた。月に関わる神話や伝説も無数にある。
 十五夜の月に日本では月見団子などを供えて祝い、中国では中秋節として月餅を食べて祝う。今後、人類が太陽系を飛び出し宇宙に生活圏を広げる時代が来て、もし月見団子や月餅がなくなったとしても、地球は人類の故郷であり、その地球の約4分の1の直径を持つ月もまた故郷にかけがえのない風景として、人類の心に永遠に残るのではないかと思う、というより、思いたい。

[参考文献など]
 国立天文台 http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/
「自転と公転の同期」http://ja.wikipedia.org/wiki/自転と公転の同期
 他。