#029 防災地下ユニット住宅

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防災地下ユニット住宅


 日本はさまざまな自然災害に襲われる天災多発国となっている。

 日本の法令上では自然災害とは、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火、その他の異常な自然現象により生ずる被害、とされている。これらの自然災害が全て発生するのが日本の国土であり宿命ともなっている。
 このような自然災害に対して防災、減災の努力をしてきた日本人の先人達の歴史があり、日本の文化風土もまた自然と自然災害との密接な関係の中で培われてきたとも言えよう。

 竜巻が多発する米国では、風速、移動速度とも時速100kmを超えるものもあり、竜巻に襲われた場合、地上の建物は崩壊とミサイル並の飛翔物による危険性が高く、頑丈な地下室に逃げ込むのが最も安全な避難方法となっている。
 日本では米国で発生するF5クラスの最強竜巻の発生はあまり観測されていないが、風速では大型台風、移動速度では巨大津波がこれに相当する。
 
 日本の住宅は、地震に対しては建築基準法に基づき、耐震強度が確保され震度6強から7程度の大地震でも人命に危害を及ぼす倒壊などの被害を生じさせないようになっている。しかしながら津波に対しては無力である。鉄筋コンクリート建ての大型ビルやマンションの高層階の部屋は津波から逃れるには有効であるが、一般の一戸建て住居は避難場所とはなりえない。
 このため2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴って発生した巨大津波によって逃げ遅れた多数の人々が犠牲となってしまった。
 「津波が来たら高台に逃げろ」というのは古今や常識になっているが、現実には沿岸地域から高台までの距離が遠い場所も多くあり、車で逃げ始めても渋滞により足の速い津波に捕まってしまうことも発生している。また、災害後の復興計画においても条件の適した高台は限られており、全ての住居を高台に移設するのは現実的ではない。

 私は地下ユニット住居をその解決策のひとつとして提案したい。
 一戸建て住居の建設に際して、地下空間の利用を更に拡大すべきと思う。現在の建築基準法には住宅地下室の容積率不算入制度が導入されており、住宅用途の床面積の三分の一までの地下室面積は容積率に算入しないでよいことになっているが、これを大幅に緩和して地下3階(地下10m)までは容積率算入の対象外となるように改訂してはどうかと考える。
 ただし従来のような地下室では津波による被害を増大させるだけであり、私の提案の本意ではない。
 容積率の大幅緩和の前提条件として、新たに制定する「住居用ユニット地下室に関するJIS基準」に基づき、耐震性の確保は無論ではあるが津波や洪水による水没に耐える構造とし、更に地上火災による地下延焼も防ぐことのできる地下防災構造が必要となる。
 このため建築強度の確保だけではなく、ユニット地下室は地上部分との遮断扉を備えた防水構造とし一定期間(少なくとも2日間)の密室状態での換気・空調能力、また外界(地上)との情報維持機能を備えている必要がある。

 このような機能を備えた住居用ユニット地下室はコストを下げるためには、ユニットの標準化が不可欠であり、工場での大量生産が求められる。
 地下室を建設するというより、住宅地に穴を堀りそこにいくつかの地下ユニットをブロックのように置いていく、というイメージであろうか。地下ユニットはそのまま地上住宅の基礎ともなる。

 このような住居用ユニット地下室により、たとえ沿岸地帯であっても一戸建て住宅を建設できるようになる。津波警報が発令されたら、落ち着いて地下住居に避難すればよい。もちろん、竜巻発生時も同様である。万が一地震等により大規模火災が発生した場合も体の不自由な人がいた場合には、外に逃げるより地下室に退避して救助を待つ選択もあるであろう。

 日本で最大の人命被害をもたらす自然災害は、大地震と大津波でありユニット地下室は最善の防災・減災対策となるのではないかと信ずる。