#057 「サイエンス」の効能

057_「サイエンス」の効能
「サイエンス」の効能


 月刊誌「日経サイエンス」は私が40年間毎月欠かさず熟読してきた愛読書だ。
 私が入社した1973年から今日に到るまで継続購読している定期刊行物は日経サイエンスだけとなっている。

 日経サイエンスは、1845年に創刊された米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本語版で1971年2月に創刊された。創刊時の誌名は「サイエンス」であり、1990年10月号より「日経サイエンス」と誌名が改められている。

 私は「KOzのエッセイ」を執筆する際にも日経サイエンスを参照文献として使う場合が多い。私の科学知識のベースは、この日経サイエンスに培養されていると言っても過言ではないからである。

 日経サイエンスは幅広い科学技術分野の最新の成果が、可能な限り非専門家にも理解できるような説明の努力がなされた文章で紹介されている。また、科学や技術だけではなく、その周辺をとりまく環境ともいえる社会問題や政策・法制度、更には人口、環境、軍事、健康などに関する研究論文も含めたいわば総合科学技術分野を網羅したものとなっている。このため、科学技術の専門的な研究成果を理解すると同時に、その成果を評価できる視点・視野が拡大される効果も併せ持っていると言える。

 ちなみに、日経サイエンスが過去10年間に掲載した科学・技術の分野項目は次のように100以上にのぼる。
 医学・薬学・生理学・遺伝学・解剖学・栄養学・免疫学、化学、生物学・生物物理学・細胞生物学・動物学・動物行動学・生態学・進化生物学・古生物学、数学、宇宙物理学・応用物理学・地球物理学・天体物理学、人類学・古人類学、気象学、経済学・実験経済学、地学、ロボット工学、宇宙航行学、量子力学・量子物理学、心理学・発達心理学、地球工学、など。
 更には、生命科学、材料科学・物質科学・半導体技術、地球科学、脳科学・神経科学、惑星科学、科学史、生物多様性、生命の起源、有人宇宙探査、などの広域科学分野。
 また、エネルギー、コンピューター・エレクトロニクス、スパイ技術・ネット盗聴、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー・バイオインフォマティクス・バイオ燃料・バイオ技術セキュリティー、ゲーム理論、スポーツ、データ融合、デジタル医療情報、メンタルヘルス、暗号、医薬政策、安全保障、軍事技術、原子力政策、情報通信、農業・林業・漁業、防災技術、水資源、日本の戦略、法制度、貧困、自動車技術、公衆衛生、などの科学技術の周辺分野。

 このように非常に多様な科学技術分野の最先端の研究成果がこの日経サイエンスに凝縮されている。
 それを40年にわたって全て熟読していると何が解るか、というと、私の場合、科学技術は日進月歩で進化・深化していることが十二分に理解できると同時に、科学が進歩すればするほど人間と宇宙に関わる神秘と謎はますます深まっていく、ということが確信できたということになる。

 これが、最先端の科学技術の成果を尊重しつつ、しかしながらもっと高次元の、また多視点に立った思考と思索が重要であるとの思いが強まる結果となっている。
 それが、「異空間にご招待」とタイトルした「KOzのエッセイ」を残す大きなモチベーションとなっている。これが、私にとっての「サイエンス」の効能であろうか。