#074 ひまつぶし運TEN

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ひまつぶし運TEN


 私の周りには4桁の数字がいろいろある。
 今年は「2015」年で、生年「月日」も10月9日であれば「1009」と4桁の数字で表す場合もある。電話番号も局番より下は4桁の数字であるし、携帯電話も同様に4桁の数字を2つ並べている。クレジットカードの暗証番号も4桁の数字が使われている、等々である。
 覚えなければならない数字としては、2桁や3桁の数字の方が4桁の数字より覚えやすいのは事実であるが、4桁となると「0000」から「9999」まで1万通りの種類があり他との重複を実用レベルで避けることができる適当な桁数とも言える。

 ところで日常生活において、最も目にする4桁の数字は、自動車のナンバープレートではなかろうか。
 車を運転しているとこの4桁の数字があふれるようにして目に飛び込んでくる。
 時に、「1111」や「8888」のように同じ数字の連番の車を次々に目にするようなことがあるが、このような時には今日は何か変わったことが起きる日なのかと予感させる気持ちにもなる。私の車のナンバーも「2222」なので特に連番ナンバーを気にするのかもしれないが。

 私は運転しながら次から次に登場する4桁ナンバーを見ながら、ある計算をして時間をつぶすことがある。「ひまつぶし運TEN」と名付けてもよいが、4桁のナンバーを構成する4つの数字を使って加減乗除を行い「10」とすることができるかどうかを数秒のうちに見極めるというひまつぶしである。

 例えば、「1234」というナンバーがあれば、この1、2、3、4という四つの数字を足したり引いたり掛けたり割ったりして、その計算の結果が10(TEN)になるようにする。
 具体的には、1+2+3+4=10 という計算ができる。同じ数字を使っても、例えば、3×4-1×2=10 という計算方法もあるし、1×(2×3+4)=10 という方法もある。10にする方法は一通りとは限らない。
 一通りでも計算方法が見つかったら即終了であり次のナンバーに移ることになる。全ての計算方法を見つけ出すそんなひまはない。
「6175」が現れると、 (1+7-6)×5=10、「3377」を見ると、3×3+7÷7=10、更に、「2579」が登場すると、5+2×7-9=10、というように次から次へと「ひまつぶし運TEN」を続けることになる。

 だが世の中はそれほど甘くはない、中にはなかなか答えが見つからないナンバーもある。
 例えば、「9360」というナンバーが出てくると答えに窮してしまう。どうしても10にすることができない。このような時には加減乗除だけではなく、べき乗というウルトラCを使うことになる。2の2乗は 2
2=4 (2×2=4)、2の3乗は 23=8 (2×2×2=8)、というのがべき乗であるが、どんな数字でも0乗は1であるというテクニックを使うとこのようなひねくれたナンバーであっても強引に10にすることができる。3+6+90=10 というような次第。
 「1113」の場合も、やはりべき乗の助けを借りないと10とはならない。1+3
1+1=10 というのがその答えとなる。

 4つの数字の組み合わせは全部で2364通りあるが、このべき乗とか場合によっては平方根(√)いうウルトラCを使っても10にすることができないナンバーもある。例えば、「0001」とか「0008」のように0が三つも入っている場合である。また、もっとも美しいとも思えるナンバーである「1111」の場合もお手上げとなる。いくら逆立ちをしても10にはならない。

 ところが世の中は広いもので、英国の数学者であるイアン・スチュアート(Ian Stewart)という人は、(加減乗除に加えて平方根はもちろんのこと)小数点(.)と階乗(!)をも使って「1111」の四つの1を使って無理やり1から140までの数字(計算結果)を作る方法を公表した。よほど暇だったのであろう。(ちなみに階乗というのは、3の階乗は、3!=3×2×1=6、4の階乗は、4!=4×3×2×1=24 という具合になる。)
 スチュアート先生のやり方は、10を 1÷.1×1×1=10 (ここで「.1」は「0.1」の意味)という計算ででっち上げている。

 私としては、スチュアート先生のように小数点を使うのは「ひまつぶし運TEN」の本道とも思えずさすがに気がひけるため、小数点を使わないと10にできないナンバーはただ単に「できない」ナンバーとして、これこそ「ひまつぶし運TEN」の成果でもあるとして直ぐにあきらめることにしている次第。

 最後に一言、本抄を最後まで読んでいただいた暇な(?)読者の方に感謝と若干の同情の意を表し本抄を終えることとしたい。

[参照文献]
「数学ミステリーの冒険」Ian Stewart著(SBクリエイティブ)2015年
(注) スチュアートは 1/.i=9 という循環少数も使っているが、本抄では話を分かりやすくするためにこの手法は除外した。